JAグループの農政運動組織が、夏の参院選に組織内候補として自民党から比例代表に出馬する藤木眞也氏の支持拡大に力を入れている。比例代表は業界団体の政治力や結集力が試される。だが、新型コロナウイルス禍の影響や、各業界の組織内候補との競り合いで苦戦も予想され、JAグループ内の危機感は高まっている。
「農業経営が持続可能なものでなければ食料安全保障は成り立たない」。5月下旬、東海地方での農政集会で、藤木氏はそう訴えた。2期目を目指す藤木氏を、全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)は2020年11月に早々と推薦候補者に決定。藤木氏は連日のように各県のJAや農政集会を回り、食料安保の強化に向けた農業政策の再構築の重要性を訴えている。
比例代表は、選挙の集票力を通じて業界団体の組織力や政治への影響力を測る「物差し」と言われる。同じ組織内候補で元JA全中専務の山田俊男氏が07年に初当選した際は、党内2位の45万票を集め、集票力を示した。
ただ、13年の山田氏、16年の藤木氏と徐々に得票数が減少し、19年の山田氏は21万票余り。第2次安倍政権以降の農協改革や環太平洋連携協定(TPP)などで農家の不安や不満を呼んだことが影響したとみられるが、「農業団体の政治力低下」という見方も広がった。
“選挙離れ”に危機感
自民党農林幹部は「これだけ食料安保が叫ばれている今、農業団体の結集力は注目されている」と強調する。参院選後は経済対策や補正予算で、高騰する肥料、配合飼料などへの対応策の検討が本格化する。
一方、参院選への農政連関係者の危機感は強い。支持者拡大の基礎となる後援会の名簿集めの遅れなどが要因とみられる。コロナ禍で、全国行脚で対面する期間も限られた。農協改革や貿易自由化の動きが落ち着くなど「改革が一服して『もう安心』という感覚で“選挙離れ”しているのではないか」(ある県の農政運動組織幹部)との危機感もにじむ。
藤木氏は、JAや農政組織との意見交換でオンラインを駆使。交流サイト(SNS)などでの発信力が各候補の浮沈を左右する選挙戦となる中、藤木氏もLINEや動画投稿サイト「ユーチューブ」による情報発信に力を入れ、専用の政策動画番組も始める。全国農政連関係者は「SNSの効果は未知数だが、農政、食料安保への関心を強めることが支持拡大になる」と話す。
【2022年6月6日付日本農業新聞掲載】